共働きの家庭学習:宿題を見られない日も子どもが始めやすくなる仕組み

仕事から帰ってきたら子どもはソファでスマホを見ていて、宿題はまだ手つかず。つい「宿題やったの?」と強い声が出てしまうけれど、本当は「おかえり」と言って、今日あったことを聞きたかっただけなのに、という日は少なくないと思います。
共働きの家庭では、毎日子どもの横に座って宿題を見るのは難しいものです。けれど、見られないこと自体が問題なのではありません。親が家にいない時間でも勉強が始まるように、先に決めておくのは三つです。いつ・どこでやるか、親が言わないこと、分からない問題を書いておく場所。これが決まっていれば、帰ってからの短い時間を、「宿題やったの?」ではなく、子どもの話を聞くほうに使えます。
見守ることと、丸投げすることは違う
親が毎日そばにいられないと、「子どもに任せきりになっているのでは」と不安になる方もいると思います。ただ、任せることと丸投げすることは違います。
- 丸投げ:仕組みも約束もないまま、「自分でやっておいてね」で終わる
- 見守り:勉強が始まりやすい流れと約束を先に整えておき、ふだんは口を出しすぎず、困ったときだけ手を貸す
見守りでの親の役割は、横について指示を出すことではなく、子どもが自分で動きやすい状態を先に作っておくことです。細かく管理されるほど、子どもは「やらされている」と感じて、自分から動く力が育ちにくくなります。反対に、始めやすい流れがあり、困ったら助けてもらえると分かっていれば、親がいない時間でも勉強は回りやすくなります。
先に整えておきたい三つの仕組み
親が見られない日でも勉強が始まるようにするには、次の三つを先に整えておきます。
- いつ・どこでやるかを決めておく
- 親が言わないことを、先に決めておく
- 分からない問題を書いておける場所をつくる
三つを一度に整える必要はありません。いちばん困っているところから一つずつで十分です。
1. いつ・どこでやるかを決めておく
最初に決めたいのは、勉強の中身より、いつ・どこでやるかです。毎日同じ流れで始まるようになると、子どもは「今日はいつやろうか」と考えずに始められるようになります。
時間は「何時から」と決めるより、「おやつのあと」のような生活の区切りに結びつけておくと、親がいなくても始めやすくなります。
- 学童から帰って、手を洗っておやつを食べたら
- 夕ごはんの前、テーブルの準備が始まる前に
- 土日は、朝ごはんのあとに
場所は、子ども部屋を完璧に整えるより、家の中でいちばん始めやすい場所を一か所決めておきます。ダイニングテーブルの端でも十分です。そこには、その日に使う教科書やドリル、鉛筆と消しゴムだけを置いておきます。探す、運ぶ、片づけるといった手間が少ないほど、子どもは一人でも座りやすくなります。
最初の量は短くてかまいません。10〜15分、または3〜5問で終わる量にしておくと、親がいない日でも最後までやりきりやすくなります。家全体の置き方から始めやすさを考える方法は、家庭学習の環境設計で紹介しています。
2. 親が言わないことを、先に決めておく
見守りでいちばん難しく、いちばん効果が大きいのがここです。帰ってきて子どもの様子を見たとき、つい言ってしまいがちな言葉を、先に「言わない」と決めておきます。
- 「勉強しなさい」
- 「まだ終わってないの?」
- 「ちゃんと集中して」
- 「なんでこんなのもできないの?」
代わりに、次のような言葉を用意しておきます。
- 「何か手伝えることある?」
- 「分からないところがあったら、あとで一緒に見ようか」
- 「終わったら、どこが難しかったか教えてね」
前者は見張られている感じを、後者は「困ったら助けてもらえる」という安心感を子どもに残します。
このルールは、親自身を助けるものでもあります。私も、帰ってすぐ「まだ終わってないの?」と言ってしまい、そこから寝るまで空気が戻らなかった日が何度もあります。毎日「やらせる係」を続けるのは、とても疲れます。「私は言いすぎない」と先に決めておくと、帰ってからの親子の空気も穏やかになりやすくなります。
3. 分からない問題を書いておける場所をつくる
親がそばにいない時間に、子どもがいちばん困るのは、分からない問題に当たったときです。そこで止まってしまうと、そのまま勉強が終わってしまいます。
そこで、勉強する場所の近くに、分からない問題を書いておけるメモ帳や小さなホワイトボードを置いておきます。
- 分からなかった問題の番号を書く
- どこで止まったかを、一言だけ書いておく
- 書いたら、その問題は飛ばして次に進んでいい
こうしておけば、子どもは親を待たずに先へ進めますし、親は帰ってから余裕のあるときに確認できます。
メモを見たら、答えを見る前に「止まったところを、ちゃんと書いておけたね」と一言返してください。どこで分からなくなったかを自分で言えるのは、人の助けを上手に借りる力の始まりです。そのうえで一緒に見るときは、すぐに答えを教えるより、子どもがどう考えたかを一緒にたどるのがおすすめです。
- 「どこまでは分かった?」
- 「どこで引っかかったと思う?」
- 「前にやった問題と、似ているところはあるかな?」
書いておく場所があると、子どもは「分からなくても大丈夫。あとで聞ける」と思えるようになり、一人で勉強する時間の不安が小さくなります。
子どもが自分で進めやすくなる、三つの工夫
三つの仕組みが整ったら、次のような工夫を少しずつ加えていきます。
選ぶところを、二つにしぼって渡す
「今日は何をやる?」と完全に自由にすると、選べずに止まってしまう子もいます。どちらを選んでも前に進む二択にしておくと、子どもは自分で決めやすくなります。
- 「宿題から始める? 音読から始める?」
- 「算数と国語、どっちを先にする?」
タイマーは、子どもが自分で押す
勉強を始めるときは、子ども自身にタイマーを押してもらいます。終わりが見えていると取りかかりやすく、自分で押すことで「自分で始めた」という感覚も残ります。
最初は、量より「座れたこと」を見る
習慣を作りはじめのころは、どれだけ進んだかより、決めた流れで座れたかどうかを見ます。見たことを伝えるときは、そのあとに一言、意味を足します。
- 「今日も、おやつのあとに自分で始めたんだね。もう、いつもの流れになってきたね」
- 「タイマー、自分で押したんだね。一人でも始められるってことだよ」
- 「途中で一回立ったけど、自分で戻ってきたね。戻ってこられるのは、強いことだよ」
「始めたね」だけでも子どもは見てもらえたと感じますが、意味がひとつ足されると、子どもはそれを自分への言葉として持っておけます。
帰ってからの5分でできること
帰ってきてからの時間は、短くてもかまいません。5分あれば、次のことができます。
- メモ帳に書かれた問題を一つだけ一緒に見る
- 「今日はどこが難しかった?」と一つだけ聞く
- やったことを一つだけ言葉にして伝える
点数を見る前に、どう取り組んだかに目を向けてみてください。
- 「この問題、どうやって考えたの?」
- 「前に苦手だったところ、今回は何を変えたの?」
点数は一回ごとの結果ですが、考え方や取り組み方は、次の勉強でもくり返し使えるものです。
見られない日があることを、愛情不足と結びつけなくていい
子どもの勉強については、「もっと見てあげて」「もっと関わってあげて」という声をよく耳にします。けれど、忙しい毎日の中で、全部を背負いこむのは現実的ではありません。
毎日横に座れないことは、愛情が足りないということではありません。限られた時間と体力だからこそ、先に仕組みを整えて、関わる時間を大事なところに使うほうが、親も子も長く続けられます。仕組みをもう少し広げたいときは、小学生の勉強習慣の付け方の五つの条件も参考になります。
まずは、勉強する場所の近くに、分からない問題を書いておけるメモ帳を一つ置いてみてください。次に帰ったとき、「宿題やったの?」の代わりに、そのメモの一行から話を始められます。
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Author
石田憲太朗
創業者・運営者
家庭で続けやすい学習設計を、研究知見と実装の両面から改善しています。
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