算数アプリで非認知能力を伸ばす!粘り強さ・自己コントロール・楽観性の育て方

「これからは非認知能力が大事」とよく聞くけれど、家庭で何をすればいいのかは分かりにくいものです。特別な習い事や教材を用意しなくても、いつもの算数アプリの時間の使い方を少し変えるだけで、粘り強さ・自己コントロール・楽観性を育てる機会は作れます。
算数アプリは、短く区切りやすく、間違いとやり直しが何度も起きる教材です。そのぶん、「難しい問題の前でもう少し考える」「決めたところで終わる」「間違えても次に向かう」といった場面が、毎回のように起きています。この記事では、その場面で親がどう関わればいいかを、三つの力ごとに紹介します。
非認知能力とは
非認知能力とは、テストの点数やIQのように数字で測りやすい力ではなく、物事への取り組み方や気持ちの扱い方に関わる力のことです。この記事では、そのうち算数アプリの時間で育てやすい三つを取り上げます。
- 粘り強さ:難しい問題が出ても、すぐにあきらめずにもう少し考える力
- 自己コントロール:もっと遊びたい、もうやめたいという気持ちがあっても、決めたところまでやって終われる力
- 楽観性:間違えても「自分はだめだ」ではなく「次はこうしよう」と考えられる力
どれも大人になってからずっと使う力ですが、「粘り強くなりなさい」と言われて身につくものではありません。実際にそういう場面を何度も経験し、そのたびにうまく乗り越えられたときに、少しずつ育っていきます。
力を育てるのは、アプリそのものより使い方
先に一つ正直に書いておくと、算数アプリを使うこと自体で非認知能力が伸びる、とはっきり確かめた研究は、私の知る範囲ではまだほとんどありません。同じアプリでも、使い方によっては、ただ問題をこなすだけの時間にもなります。
違いを生むのは、アプリの時間の中で起きる三つの場面です。
- 少し難しい問題にぶつかったとき(粘り強さ)
- 決めた量が終わって、アプリを閉じるとき(自己コントロール)
- 間違えたとき(楽観性)
どの場面も、アプリの中ではほぼ毎回起きています。親にできるのは、その場面が子どもにとって「うまく乗り越えられた経験」になるように、難しさや終わり方を整え、終わったあとに一言かけることです。
粘り強さを育てる
難しさを「少し考えれば届く」くらいに合わせる
粘り強さが育つのは、すぐに解ける問題の前でも、まったく歯が立たない問題の前でもありません。少し考えれば届く、ちょっとだけ難しい問題の前です。
簡単すぎると、考える場面そのものが来ません。難しすぎると、挑戦する前にあきらめることを覚えてしまいます。目安は、10問やって2〜3問は間違えるけれど、考え直せば解ける程度です。アプリにレベル設定があるなら、このくらいに合わせてみてください。
計算が速く、全部すぐに解けてしまう子もいます。速く解けるのは、その計算がもう身についているということで、練習の成果です。ただ、そのレベルだけを続けていると考える時間が生まれないので、ときどき一つ上のレベルを混ぜてみるのがおすすめです。
褒めるなら、結果より取り組み方
難しい問題を解き終えたとき、つい「頭がいいね」「すごい、全部正解」と言いたくなります。ただ、能力を褒められた子ほど、次に難しい問題で失敗したときにあきらめやすかった、という実験があります。とはいえ、「がんばったね」と努力を褒めればよいとも言い切れません。この二つの実験は、「頭がいいね」は逆効果?で詳しく取り上げています。
いちばん確かなのは、子どもが実際にしたことを、そのまま言葉にすることです。
- 「すごい、全部正解」→「最後の問題、一回消して書き直してたね」
- 「計算が速いね」→「前は指で数えてた問題、今日は数えずに解けてたね」
- 「がんばったね」→「一回止まったけど、もう一度考えてたね」
自分が何をしたかを言葉にして返してもらうと、子どもは次に同じ場面が来たとき、そのやり方をもう一度選べるようになります。
自己コントロールを育てる
終わりは時間ではなく、問題の数で決める
自己コントロールの練習になるのは、始めるときよりも、決めたところでアプリを閉じるときです。もっとやりたい日も、もうやめたい日も、決めたところで終われたら、それが一回の練習になります。
終わりを決めるときは、時間より問題の数のほうが守りやすくなります。「15分やろうね」だと、子どもは問題より時計が気になります。「10問で終わり」「1セットで終わり」なら、あとどれくらいで終わるかが画面で分かります。
数は、子ども自身に決めてもらうのがおすすめです。始める前に「今日は何問?」と聞き、子どもが決めた数のところで閉じます。自分で決めた終わりを自分で守る経験が、自己コントロールを育てます。
閉じたあとの流れも決めておく
アプリを閉じたあと、そのまま動画やゲームに流れてしまう子も多いものです。閉じたあとの流れを、先に決めておきます。
- アプリを閉じたら、タブレットを充電する場所に戻す
- 閉じたら、親に「終わった」と言いに来る
閉じられたときは、「10問って決めて、10問で閉じたね」と、事実だけを伝えます。もっとやりたそうだったのに閉じられた日は、それも立派な一回です。
ごほうびで終わりを守らせない
「決めたところで終われたら、ゲームを5分」のように、ごほうびで終わりを守らせる方法もあります。最初は効きやすいのですが、ごほうびがあるから閉じていた子は、ごほうびがない日に閉じる理由がなくなってしまいます。いまごほうびを使っている家でも、一度にやめる必要はありません。少しずつ減らしていく手順は勉強のご褒美を減らすときの進め方にあります。
楽観性を育てる
間違いを「やり方」の問題として扱う
楽観性は、「前向きに考えよう」と言われて育つものではありません。間違えたときに、それを「自分がだめだから」ではなく「やり方がまだ決まっていないから」と受け止めた回数で育っていきます。
子どもが間違えたとき、親の言葉を少しだけ変えてみてください。
- 「なんでこんなのを間違えるの?」→「どこで引っかかった?」
- 「ちゃんと見ればできたでしょ」→「次は、どこを先に見る?」
- 「また間違えてる」→(何も言わずに、もう一度解くのを待つ)
やり方に目を向ける言葉をかけられると、子どもは間違いを「直せるもの」として受け取りやすくなります。
やり直しを、はじめから一回分に含めておく
間違い直しを反省や罰のように扱わないことも大切です。間違えた問題は最後にもう一度出てくる、というように、やり直しをはじめから一回分の中に入れておきます。そういう機能のあるアプリならそれを使い、なければ、終わったあとに間違えた問題を一問だけ紙に書き出して解き直す形でもかまいません。
「間違えたら終わり」ではなく「間違えたら、もう一回がある」が当たり前になると、間違えた瞬間の落ち込み方が少しずつ軽くなっていきます。算数の問題がこうした心の力の練習になる理由は、算数を心の筋トレに変える考え方でも書いています。
隣にいられない日は、終わったあとに一つだけ聞く
共働きの家や、下の子がいる家では、アプリの時間にずっと隣に座っているのは難しいと思います。それでも大丈夫です。三つの場面は、アプリが終わったあとの一分で振り返れます。
聞くのは、次のうち一つだけで十分です。
- 粘り強さなら、「いちばん考えた問題はどれだった?」
- 自己コントロールなら、「今日は何問で終わりにしたの?」
- 楽観性なら、「間違えた問題、二回目はどうだった?」
点数を先に聞かないのがこつです。点数から聞くと、会話が点数の話だけで終わってしまいます。
子どもが乗り気でない日は、無理にアプリを開かせなくてかまいません。やらなかった日のことを次の日に持ち出さず、次にいつやるかも子どもに決めてもらいます。
アプリを選ぶときに見るところ
これからアプリを選ぶなら、画面の楽しさより、三つの場面がきちんと起きる作りになっているかを見てください。
- 難しさを合わせられるか:レベルを選べる、または間違い方に合わせて問題が変わる
- 終わりが見えるか:「あと何問」「このセットで終わり」が画面で分かる
- 間違えたあとに、もう一度解けるか:間違えた問題があとで出てくる、ヒントを見て解き直せる
ポイントやメダルの演出が大きすぎるアプリにも注意が必要です。子どもが問題よりメダルを見ているようなら、終わりの場面でメダルが主役になってしまいます。比べるときのもっと細かい基準は、小学生向け計算アプリの選び方が参考になります。
算数アプリは、計算を練習するための道具です。そのうえで、同じ10分の中で起きる小さな場面に親が少し目を向けるだけで、粘り強さや自己コントロール、楽観性を練習する時間にもなります。次にアプリが終わったら、点数を聞く前に「いちばん考えた問題はどれだった?」と聞いてみてください。
この記事をシェアする
Author
石田憲太朗
創業者・運営者
家庭で続けやすい学習設計を、研究知見と実装の両面から改善しています。
運営者プロフィールを見る




