反抗期前に伝えたい!子どもが「勉強は自分のため」と気づく対話術

「勉強しなさい」と言うたびに子どもが黙りこみ、返事が「うん」「わかってる」だけになる。小学校の中学年から高学年にかけて、勉強の話をするときの言い方に悩む親御さんは多いものです。
親としては、子どもに「勉強は自分のためのもの」と分かってほしい。けれど、それを言葉で説明すればするほど、子どもには「親に言われてやるもの」に聞こえてしまいます。反抗期に入る前のいまは、伝え方を少し変えるだけで、子どもがその意味を自分で感じ取りやすい時期です。この記事では、なぜいまなのかと、説教にならずに伝わる六つの伝え方を、会話の例とあわせて紹介します。
なぜ、反抗期の前がいいのか
高学年から中学生にかけて、子どもは親の言葉を、中身と「親の都合」に分けて聞くようになります。同じ「勉強しておいたほうがいいよ」でも、「それ、親が心配なだけでしょ」と受け取るようになる。これ自体は、自分の考えを持ちはじめた健全な成長です。
中学生を対象にした研究をまとめて、親の関わり方と学業との関係を比べた分析があります。宿題を見る、手伝うといった家庭での関わりは、成績とほとんど関係がありませんでした。いちばんはっきり結びついていたのは、勉強する意味や将来の目標について話し合う、学校で習っていることを本人の興味と結びつけて話す、といった関わりでした。元になった研究の多くは一時点の調査なので、こうした話し方をすれば成績が上がる、とまでは言えません。それでも、中学生になった子に親ができることは、見張ることより話すことのほうにある、と考えられます。
ただ、中学生になってから急にそういう話ができるようになるわけではありません。勉強の話が「親が言って、子どもが聞き流す」形で固まってしまうと、あとから話し方を変えるのは、いまより手間がかかります。反抗期の前に、勉強の話をしてもけんかにならない形を作っておくと、その形は中学生になってからも生きてきます。
「勉強は自分のため」と伝わる六つの伝え方
先に、六つを並べておきます。
- 話すタイミングと場所を選ぶ
- 最初の一言は、受け止める言葉にする
- 「将来困るよ」より、いまの生活とつなげて話す
- 親の心配ではなく、子どもの選べることの話をする
- 勉強は子どものものだと、言葉にして伝える
- ルールは最低限だけ、子どもと一緒に決める
全部を一度に変える必要はありません。いちばん言い合いになりやすい場面に近いものから、一つ選んで試してみてください。
1. 話すタイミングと場所を選ぶ
同じ言葉でも、いつ、どこで言うかで、子どもへの届き方はずいぶん違ってきます。避けたいのは、次のような場面です。
- テストの点を見た直後
- 宿題をしている最中に、横から口を出す
- 親が立ったまま、座っている子どもを見下ろす形で話す
話すなら、横に並んで座れるときや、何かをしながら話せるときが向いています。車の中、洗濯物をたたみながら、散歩の途中。目を合わせずにすむ場面のほうが、子どもは身構えずに話せます。
2. 最初の一言は、受け止める言葉にする
話しはじめの一言は、アドバイスより先に、子どもの様子を受け止める言葉にします。
- 「疲れてる感じがするね」
- 「テストのこと、ちょっといやだった?」
- 「いま話せそう? それとも、あとのほうがいい?」
三つめの「あとのほうがいい?」は、とくに高学年の子に向いています。話すかどうかを自分で決められると、あとで子どものほうから話しかけてくることがあります。「勉強しなさい」の代わりに使える言い方は、勉強しない子どもへの声かけで場面ごとにまとめています。
3. 「将来困るよ」より、いまの生活とつなげて話す
「勉強しないと将来困るよ」は、間違ったことではありません。ただ、小学生にとって将来の話は遠く、脅されているように聞こえることもあります。勉強の意味は、子どもがいま実際にうまくなったことから話しはじめると伝わりやすくなります。
ゲーム、サッカー、ピアノ、工作。何でもかまいません。
- 「最近、うまくなったことってある?」
- 「それ、どうやってうまくなったの?」
- 「勉強でも、同じやり方が使えそう?」
ここで「だから勉強も頑張りなさい」と締めくくらないのがポイントです。締めた瞬間に、子どもは「結局、勉強の話か」と気づいてしまいます。子どもの中に「やり方を変えたら、うまくなった」という感覚が一つ残れば、その日はそれで十分です。
4. 親の心配ではなく、子どもの選べることの話をする
勉強の話で子どもが冷めてしまうのは、「それ、親が不安だから言っているだけでしょ」と感じたときです。親が不安になるのは自然なことですが、その不安をそのまま伝えると、勉強は「親を安心させるための作業」になってしまいます。
代わりに、子ども自身が選べることが増える、という話に置き換えます。
- 「勉強しないと、いい学校に行けないよ」→「できることが増えると、自分で選べることも増えるんだよね」
- 「将来困るのはあなただよ」→「大きくなって、ここは合わないなと思ったとき、別の道を選べるほうが楽だと思うんだ」
5. 勉強は子どものものだと、言葉にして伝える
勉強の話がこじれやすい家庭では、親が「子どもの勉強を管理する役目」を背負いすぎていることがよくあります。その役目を少し下ろして、勉強は子どものものだと、はっきり言葉にしておきます。
- 「あなたの勉強は、お母さん(お父さん)の成績表じゃないよ」
- 「手伝えることは手伝うし、応援もする。でも、決めるのはあなた」
これは突き放すことではありません。困ったときに一緒に考える役は、親のもとに残っています。テストが返ってきたときも、「何点だった?」より先に、「今回はどこがうまくいったと思う?」と聞いてみてください。子どもの口から振り返りや次の工夫が出てくるような問いかけ方は、子どもの行動を変える質問の仕方で詳しく紹介しています。
6. ルールは最低限だけ、子どもと一緒に決める
反抗期に入ってから細かいルールを増やすと、ルールそのものがけんかの種になります。まだ話し合いがしやすいいまのうちに、少なくて守りやすい約束だけを、一緒に決めておきます。
- だいたいどれくらい勉強するか。数字は子どもに先に言ってもらう
- うまくいかなくなったら、叱るのではなく、やり方を話し合い直す
親が「毎日15分」と決めるより、子どもが「10分なら」と言った数字から始めるほうが続きます。10分が少なく見えても、自分で決めた10分です。
六つをつなげると、会話はこうなる
六つの伝え方は、実際の会話ではばらばらに出てきます。たとえば、テストが返ってきた日の帰りの車の中なら、こんな流れになります。
親「テスト、返ってきたんだね」
子「うん。……あんまりよくなかった」
親「そっか。ちょっといやだった?」
子「べつに」
親「いま話す? 家に着いてからにする?」
子「……あとで」
ここでいったん話を終えて、家に着いてからも親のほうからは切り出しません。夕ごはんのあと、子どもが自分から答案を持ってきたら、そこではじめて中身の話をします。
子「これ、最後の問題が分かんなかった」
親「そこまでは、どうやって解いたの?」
子「図をかいた」
親「図をかいたんだ。次に最後の問題みたいなのが出たら、どうする?」
子「……また図をかく」
親は点数に一度も触れていません。それでも子どもは、自分から答案を出し、自分のやり方を話し、次にどうするかを自分で言っています。いつもこううまくいくわけではありませんが、こうした会話が一度でもできると、次にテストが返ってくる日が少し楽になります。
話してくれない時期が来ても
どんなに伝え方を工夫しても、口をきいてくれない時期は来るかもしれません。それは伝え方が間違っていたからではなく、子どもが大きくなっている途中だからです。
ただ、小学生のうちに「勉強の話をしても、けんかにならなかった」という経験が何度かあれば、その記憶は残ります。中学生になって、ある日ふと「ちょっと聞いていい?」と話しかけてくるのは、たぶんそういう子です。これは研究というより私の見立てですが、試して失うものはありません。
「勉強は自分のため」は、言葉で教えるものではなく、子どもが自分で気づいていくものです。次に勉強の話をするときは、目を合わせずにすむ場面を一つ選んで、「いま話せそう? それとも、あとのほうがいい?」から始めてみてください。
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Author
石田憲太朗
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