実況中継の声かけとは?子どもの行動をそのまま言葉にする会話の例

「宿題やりなさい」「もうゲームは終わりにしなさい」と何度言っても、返ってくるのは不機嫌な顔と「あとでやるってば」の一言。子どものためを思って言っているのに、言うほどこじれていくと、親のほうが疲れてしまいます。
そんなときに試してみてほしいのが、「実況中継の声かけ」です。「ソファで休んでるんだね」のように、子どものいまの行動を、評価も命令もせずにそのまま言葉にする関わり方です。言われた子は、責められる前に「見てもらえた」と感じるので、身構えずに次の一歩を選びやすくなります。それでも動けない日は、そこに小さな問いかけを一つつなげます。
実況中継の声かけとは
実況中継の声かけは、子どものいまの行動や様子を、スポーツの実況のように、短くそのまま言葉にする話し方です。
- 「いま、ソファで休んでるんだね」
- 「明日の準備、教科書のところまでやったんだね」
- 「宿題は算数から始めることにしたんだね」
子どもがまだ動き出す前の実況で守るのは、次の三つだけです。
- 評価しない:「だめでしょ」「まだなの?」を付けない
- 命令しない:「だから早くやって」と続けない
- すぐに助言しない:「こうしたら?」は、あとにとっておく
子どもの行動は、一つひとつが子ども自身の選んだことです。実況中継は、その選んだことを、親が横から言葉にして見せるイメージです。
命令より、反発が起きにくい理由
「それだけで、本当に変わるの?」と思うかもしれません。実況中継の声かけが役に立ちやすい理由は、三つあります。
追いつめられた感じが少ない
「しなさい」と強く言われるほど、子どもにとって勉強は、自分で選んだものではなくなっていきます。子どもの考えややり方を尊重する関わり方のほうが、指示や口出しの多い関わり方より、子どもが自分から取り組む気持ちにつながりやすい、という研究の報告もあります。実況中継は、「しなさい」ではなく「いまこうしているね」と言うだけなので、子どもが身構えにくくなります。
「見てもらえている」と感じられる
人は、評価や指示の前に、自分の様子をちゃんと見てもらえていると感じると、落ち着きやすくなります。「まだ休みたい感じなんだね」と言われると、責められるより先に「分かってもらえた」と感じます。その安心が、次に動き出すための土台になります。
自分の様子に気づくきっかけになる
「ランドセルは出せたんだね」「ノートは開いたんだね」と言葉にしてもらうと、子どもは、自分がもう少し動きはじめていることに気づきます。自分の状態を自分で見る力はまだ育っている途中なので、親がしばらくその手伝いをする、と考えてください。
場面別の例
宿題をなかなか始めないとき
「早く宿題やりなさい」「まただらだらして」と言いたくなったら、代わりに、いまの様子をそのまま言葉にします。
- 「いま、ソファで休んでるんだね」
- 「帰ってきてから、まだゆっくりしたい感じなんだね」
少しでも動きが出たら、その変化も短く言葉にします。
- 「ランドセルは出したんだね」
- 「プリントを机に置いたんだね」
- 「ノートを開いたんだね」
この段階では、事実を短く拾うだけで十分です。子どもは、「少し始めている自分」に気づきやすくなります。
ゲームから離れないとき
つい強く言いたくなる場面ですが、まずは、子どもがいま何に集中しているかを言葉にします。
- 「いま、そのゲームの大事なところなんだね」
- 「さっきから、何回も挑戦してるね」
ここで「だから早くやめなさい」と続けると、実況が説教に変わってしまいます。私はこれを何度もやりました。まずは実況で止めて、少し間を置いてから、「どこまでいったら、止めやすそう?」と聞いてみてください。
少し頑張れているとき
実況中継がいちばん生きるのは、実はこの場面です。ここでは、見えた事実のあとに、それが何を意味するかを一言足します。
- 「最初のころより、座るまでが早くなってきたね。自分で切り替えられるようになってるんだよ」
- 「1ページ終わるまで、席を立たなかったね。集中が続く時間がのびてきたね」
- 「難しいところで止まったけど、自分で考えて進めてたね。止まってもそこから進めるのは、大きな力だよ」
「えらいね」と言いたくなったら、言ってかまいません。そのあとに、何が起きていたかと、それが何を意味するかを一言ずつ足すと、子どもはその言葉を、次に同じ場面で自分に掛けられるようになっていきます。小さな「できた」を積み重ねる方法は、小さな成功体験で勉強の自信を育てる方法で紹介しています。
実況だけで動けない日の、次の一手
実況中継は役に立ちやすい方法ですが、それだけで毎回動けるわけではありません。そんな日は、次の工夫を組み合わせてください。
- 最初の一歩を小さくする:「まず1問だけにする?」「5分後に始めることにする?」
- 選べる形にする:「漢字と計算、どっちから?」「机とリビング、どっちでやる?」
- 終わりを先に決める:「今日は、このプリント1枚で終わりにしようか」
- ほかの行動とセットにしておく:「おやつを食べたら、プリントを1枚やる」
様子を受け止めたあとに、子どもに選んでもらう問いかけへつなぐ方法は、子どもの勉強で使う問いかけで紹介しています。
実況中継は、家のルールと組み合わせて使う
命令しないことと、すべてを子どもに任せることは違います。毎回その場で「やるの? やらないの?」と話し合う形になると、親も子も疲れてしまいます。
そこで、次のような家のルールは、親が先に決めておいてかまいません。
- 宿題は、その日のうちにやる
- 夕ごはんまでには、宿題に取りかかる
- 宿題が終わるまでは、動画やゲームはあとにする
そのうえで、いつ始めるか、何から始めるか、どこでやるかは、子どもに選んでもらいます。「何をするか・いつまでにするか」は親が枠を作り、「どう始めるか」は子どもが決める、という分担です。
時間になっても動けない日は、ルールをなくすのではなく、始め方を小さくします。「じゃあ、1分だけやってみようか」「最初の1問は、一緒に問題を読もうか」。決めた枠は守りつつ、やり方はやわらかくする。実況中継は、その間をつなぐ声かけとして使いやすい方法です。
毎日うまくできなくても大丈夫です。気づいたときに一回、「いま、こうしてるんだね」と言えれば十分です。次に子どもがソファから動かないときは、「早くやりなさい」の前に、見えている様子を一言だけ言葉にしてみてください。
この記事をシェアする
Author
石田憲太朗
創業者・運営者
家庭で続けやすい学習設計を、研究知見と実装の両面から改善しています。
運営者プロフィールを見る




